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10:49:36


携帯の着信は「葛巻」だった


紗江は自分が知らない間の部屋の異変に気づき始め


目に見えない恐怖を感じていた最中の「葛巻」からの電話に縋るようにすぐに掛けなおした



「プルル・・」


『もしもし』



葛巻は直に電話に出た


『葛巻君、紗江』


『うん』


『日中、大分考え込んでいるようだったから心配になってさ』


『うん・・・ありがとう』


『何かあったの?』


『どうして?』



『電話に出なかったからさ』



『ごめん・・・少し恐くて』



『恐い?どうして何かあったのか?』



『分かんない・・気のせいかもしれないんだけど・・』



『どうしたんだ?』



葛巻は何かに脅えているような紗江が気になった




『部屋が少しおかしいの・・・』



『部屋が?』



『うん』



『意味が少し分かりづらいんだけど・・・』




紗江は知り合いからの電話に気が動転していて、上手く説明が出来ないでいた




『よく分かんないけど、一人じゃ不安だろ?今からそっちに行くよ』




『でもぉ・・悪いし・・』




葛巻の心配ぶりに根負けした、紗江は自宅までの道のりを伝えた




『行ってから詳しく話を聞くよ』




『うん』




電話を切った




「誰と電話をしていたんだ・・・」




紗江は小声で話していたゆえ、佐原には傍受する事が出来なかった




「この状況下だ、クラスメートなら誰でも話すだろう・・」



佐原は葛巻と言う視点は外していた



その後、紗江は更に掃除を続けていた



葛巻が部屋に来るからだった



そんな展開になっているは、佐原は気づかずに監視を続けた



佐原の車の遥か向こうから、走ってくる原付バイクの音・・・




「ブーン・・・」




佐原の車の横を通り抜けた




佐原はバイクの男に姿が見えないようにし、監視を続けた



バイクの音が近くで止まった



「ん?」



バイクの運転手は急いでいるようだった



慌てて、ヘルメットを脱ぎ、アパートの玄関に入っていった




「まさか・・」




佐原はモニターを食い入るように眺めた





「ピンポーン」




玄関で何かが音が鳴ったようなシーンが見えてきた



次の瞬間、先ほどバイクのらしき男が、紗江の部屋の中に居た






『何ッ!!』



佐原の目に飛び込んできた男は、「葛巻」だった





「己・・葛巻・・俺の紗江に・・」




佐原の手、体は怒りに震えていた




今すぐにでも、部屋乗り込み、葛巻を引き釣り出したい・・


動けなくなるまで殴り倒したい・・・



だが、そんな姿を紗江に見せるわけにはいかない・・






『紗江ぇぇ・・・何故だ・・何故、ヤツなんだ・・・』





「誠心誠意、紗江に尽くしているはずなのに・・・」



「紗江に近寄る、害虫どもを排除したやったのに・・」




『葛巻め・・・ただでは済まさないぞ・・』



佐原は怒りを押さえ込み監視を続けた



紗江と葛巻は部屋の中央に座り、なにやら話を始めた




『無理やり押しかけて悪かったね』


『ううん、本当は一人で居るのが恐くて』


『そらそうだよ、女の子だし、あんな事があったばかりなんだから』



『うん・・でもそれだけじゃないの・・』



『えっ?』



『実は今日、部屋に帰ってきてからなんだけど部屋の中がおかしいの・・・』



『部屋が?』



『色んなものが無くなってたの・・・』



『今日の出来事かい?』



『いつからか分からないの・・もしかしたら相当前からかもしれない・・・』



『美紀の事が起きる前からかい?』



『分かんないの!』




紗江は大きな声で言った



『何が無くなったんだい?』



『アルバムとか・・写真、プリクラ・・とか色々・・』



『気のせいでは無いんだね?』



『最初は、あれ?って思ったけど、どこかにしまったんだろうと思ってたのね』



『うん』




『そして・・』



『うん』




紗江は、赤い顔しながら黙り込んだ



『何があったんだい?』



『言いづらいんだけど・・笑わないで聞いてくれる?』




『あぁ』



『その後、お風呂に入ろうとして着替えを取ろうとしたときに・・服とか下着とか・・無くなっていたの・・』




『ええっ?』




『洗濯する前のとかも・・無いの・・』




『えっ?』




葛巻は紗江が言い出した事が理解できないでいた




『部屋に誰かが入っている・・としか考えられなくて・・・』






紗江の脅える口調と目に、葛巻は「ゴクリ」唾を飲んだ・・・










































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